日本の伝統文化は海外において高い評価を得ています。
筆者が住んでいるヨーロッパでも日本関連のお店が人気を集めています。
ポピュラーな日本食である、寿司やラーメンに加え、家電や車、雑貨なども高評価です。
また文化としてのアニメ、作法なんかも意外に海外では広まっています。
筆者の友人がカレーライスのことを全て「カツカレー」と呼んでいて驚いたこともあります。
そんな日本文化ですが、訪日外国人の増加に伴って更に注目を集めているものがあります。
それが「祭り」です。
訪日外国人は日本での文化的体験を味わいたい人がほとんどです。
そのため、日本独自の文化を体験できる「祭り」は立派な観光資源になっています。
よって2016年11月に日本全国の33の祭りがユネスコの無形文化遺産に登録されました。
一方で、この文化遺産登録から漏れてしまった祭りがあります。
それが「岸和田だんじり祭り」です。
だんじり祭りを代表する祭りですが、無形文化遺産には登録されませんでした。
その代わり、三重の上野天神祭のダンジリ行事は登録されています。
これにはだんじり祭りに付き纏う、事故の歴史が関わっていると言われています。
この記事では、そんなだんじり祭りの事故の歴史や祭りの概要などについて説明します。
だんじり祭りの概要、そして事故の歴史について
だんじり祭りの事故について説明する前に、そもそも、だんじり祭りのとはどんなお祭なのか?
この祭りの歴史について知っておくと、本記事の内容が更に感慨深いものになりますので、まずは下記の記事をご覧ください。
【だんじり祭りの概要】
だんじり祭りの「だんじり」は祭りで使われる神輿を乗せた台車のようなもののことです。
地域毎にそれぞれ「だんじり」を持って、人力にて街中を巡ります。
このだんじり祭りでは「やりまわし」や「山合わせ」が見所になります。
「やりまわし」とは重さ約2t〜3tもあるだんじりを凄いスピードで曳き、直角のカーブをスピードを保ったまま、曲がることです。
言わば車のドリフトのようにギリギリを攻めて曲がる様子に「勇敢さ」や迫力を味わいます。
「山合わせ」とはだんじり同士を激しくぶつけ合うことです。
これも大きなだんじり同士がぶつかり合うことでど迫力の光景を生み出します。
このだんじり祭りは九州、四国、中国、近畿地方で行われており、特に近畿地方が盛んです。
数あるだんじり祭りの中でも大阪の「岸和田だんじり祭り」が代表的で、毎年40万人もの人が訪れる人気のお祭りです。
このように激しさや勇敢さに起因した迫力がこの祭りの魅力であり、各メディアにおいても毎年取り上げられています。
【繰り返される事故の歴史】
さて、そんな人気のあるだんじり祭りにおいて、合わせて報じられることが多いのが事故です。
過去のニュースを見ていくと、主に近畿地方にて死亡事故が多発しています。
事故原因は主に重量のあるだんじりが関わっています。
だんじりが横転して下敷きになったり、だんじりと電柱や壁に挟まれたり、民家にだんじりが突っ込んでしまうこともあったようです。
だんじりが高重量である上、凄い速度で激しく動かす為、かかる衝撃は人を死亡させてしまうのです。
死亡人数自体は1事故辺り、1・2名程度であることが多いです。
その為、多くの観客を集めて、祭り自体の治安が悪くなっていることが事故の原因ではないようです。
だんじり祭りの魅力である、激しさや勇敢さが事故に関係しているのです。
【なぜ事故が繰り返されてしまうのか??】
このような死亡事故が繰り返された歴史が「岸和田だんじり祭り」の無形文化遺産登録の落選理由の一つになっているのです。
では、事故を防止するために何か対策をしているのでしょうか?
だんじり祭りは地域の誇りであり、地元の人々も祭りには多大な協力をしています。
多くの人を地元に呼ぶことができる祭りは立派な観光資源でもあるからです。
事故防止のために電柱などへのカバー設置や、警察の指導を受けている場合もあるようです。
しかし、事故を無くすまでには至っていません。
それは、この祭りが築いてきた激しさや勇敢さの演出が、維持、またはより顕著になっているからです。
メディアへの露出も増えて、祭りを主催する人間としてはより話題性のある祭りにしたいものです。
そのため、だんじりの「やりまわし」や「山合わせ」の激しさが衰えないのです。
ましてや、より激しいものにするために無茶な練習や動作が入ることがあり、事故のキッカケになっています。また、他の祭りと同様に、多くの観客による騒音被害や治安維持という問題も常に抱えています。
安全で楽しい、だんじり祭が見たい!!!
多くの行事や祭りに規制がかかりやすい現在において、だんじり祭りは難しい立場にあります。
だんじり祭りの魅力である「激しさ」と「安全さ」のバランスを上手く取る必要があるからです。
だんじり祭りが健全に楽しまれ、今後も末永く続いていく為にも、激しさの演出に工夫が必要です。
元々は地域の「豊穣」を祈願した祭りであるので、是非地域のみなさんにとって幸せな誇りある行事となってほしいものです。
そんな「激しく」、「安全な」だんじり祭りを観光客も心待ちにしているはずです。