スポーツの国際試合でよく国歌斉唱の場面があります。
胸に手を当てて、国を思い、大きな声で歌っていますよね。
時に、その姿がとても象徴的なシーンになることがあります。
筆者が一番心に残る国歌斉唱のシーンは歌わないシーンです。
1998年にフランスで行われたサッカーW杯でのシーンでした。
地元フランス代表のスター、ジダン選手がフランス国歌を全く歌わなかったのです。
なぜならジダン選手はフランスの植民地であったアルジェリアにルーツを持っていたからです。
フランス国歌の「ラ・マルセイエーズ」はフランス革命時の革命歌が元になっています。
そのため征服や侵略のニュアンスが多少含まれるので、ジダン選手は歌うのを避けたのです。
筆者がはじめて目にしたW杯でしたが、今でもかなり印象に残っています。
このように、国歌には国の特性や歴史が浮き彫りになります。
それでは、私たち日本の国歌である、君が代の成り立ちや特性について分かりやすく説明します。
そして、海外の反応を通して、君が代の特殊な点についても解説していきますね。
君が代をもっと知ろう!!
まず君が代自体の成り立ちについて簡単に解説します。
【君が代の成り立ち】
君が代の起源となるものを知っている人は少ないです。
歌っている時も歌詞の意味を理解して歌っていることは少ないでしょう。
そんな君が代ですが、まず歌詞の元となるものが先に存在していました。
歌詞の元になっているのはなんと『古今和歌集』の和歌になります。
10世紀初めに出た和歌集の詠み人知らずの短歌が国歌のもとになっているのです。
国歌の作詞としては世界最古のものとなります。
確かに、歌詞の言い回しは現代語とは異なると思っている方も多いです。
しかし、歴史の授業に出てくる『古今和歌集』に載っていることはあまり知られていません。
とても歴史ある歌詞なのです。
その後、1869年にイギリス人の軍楽隊教官によって作曲されます。
それまで鎖国の影響で国歌がそもそも存在しなかったのです。
海外から国賓を招く際に国の品格を疑われるので、国歌を作った方が良いとイギリス側から提案がありました。その後、この作曲をもとに、宮内省などが編曲し、戦前から広く国歌として扱われました。
そして1999年に国歌として法律で定められました。
【君が代の歌詞解釈】
君が代の歌詞を簡単に説明します。
「君が代は 千代に八千代に」の部分は「あなたの世界、治世が数千年末永く」という意訳できます。
そして「さざれ石の巌となりて 苔のむすまで」の部分は「小石が大きな岩になって苔が生えるほど続きますように」と意訳できます。
この歌は元々、祝いの席で祝福される人の長寿を願った短歌と言われています。
その後、この歌は様々な物語や歌舞伎、舟唄、盆踊り曲、恋歌などの多岐に引用されます。
詠み人知らずであったことが様々な意味の捉え方を可能にしたのです。
よって、君が代の短歌は、世間の幅広い人に知れ渡っていきました。
明治初頭には海外との対等な文化をアピールする為に、この短歌の歌詞を皇族の繁栄という意味に捉え、国歌として扱うようにしました。
この皇族を讃えるという点が、のちに戦後において論争を巻き起こします。
国民主権の国に合わない、軍主権の戦前を思い出すなど、様々な反論がありました。
しかし、元々の君が代の意味は歌を受ける人の幸せの長続きを祈るものなのです。
昔から行われてきた、時代に合わせた解釈の変化が上手くいかない事があったのです。
【君が代の海外での反応】
上記のような反論も乗り越えて、正式に国歌に登録されたのは平成に入ってからなのです。
そんな日本の国歌を海外はどう見ているのかを説明します。
「行進曲とは違う曲調で、穏やかな自然や平和が思い浮かぶ。」
このような反応は非常に多いです。
筆者が住んでいるイタリアでも君が代の評価はとても高いです。
ヨーロッパ諸国の国歌は軍歌や軍の行進曲にルーツを持つことが多いです。
そのため、国の威信を表現するような強い、派手な曲調が一般的です。
一方で、君が代は歌詞に自然を取り入れ、曲調も非常に穏やかです。
その曲の雰囲気と戦後より平和を願い続ける日本の姿勢が一致するようです。
「国歌自体が非常に短く、強くインパクトが残る。」
君が代は世界最古の歌詞であると共に、世界最短の国歌でもあります。
短歌を元にしている点がこの短さに影響しています。
短い曲ながらテンポは穏やかで、曲調も穏やかに終わることで他との違いを生み出しています。
日本らしく、穏やかに、控え目にゆっくりとした国歌で海外で人気を得ています。
確かに他国では8番まである国歌や延々続く国歌もあるようです。
意味を知り、胸を張って君が代を歌おう!!
ここまで君が代の歴史や成り立ち、歌詞について、海外の反応を説明しました。
君が代が持つ、前向きなメッセージやその歴史を知ることが出来たでしょう。
オリンピックやグローバル化に伴って、これから海外の人との交流も増えていきます。
そんな中で、自分の国の国歌について胸を張って説明できたら素敵なことです。
君が代と共に、「日本らしさ」を伝えましょう。