除夜の鐘をなぜ鳴らすのか、その意味について知っている大人はいると思います。
そう108の煩悩(ぼんのう)を消すためです。
しかし、この事を子供に説明するのは非常に困難です。
煩悩とはなにか、なぜ108なのか、なぜ大晦日なのか、そもそもなぜ鐘を鳴らすと煩悩がなくなるのかなど、説明しにくい、そもそもよくわかっていないこともあると思います。
そこで今回は除夜の鐘について、またそのことについての子供への伝え方を解説していきます。
そもそも煩悩とは?108個あるの?
煩悩とは仏教で用いられる言葉で、心身を悩ませ、苦しめ、煩わせ、汚す心の動きの事とされています。簡単に言えば肉体や心の欲、怒り、執着などの事です。
子供たちにとって身近な表現にすると、ゲームをしたい、お菓子を食べたいといった感情でしょうか。
こうした欲が叶わない時に人は苦しみを生じます。
また叶っても次が欲しくなって苦しくなってしまいます。
そこで新年を迎えるにあたり、鐘を突いてこうした煩悩を取り払おうというのが除夜の鐘です。
108の煩悩についてですが、煩悩の数は108あるのか、またどういった煩悩なのかというのは諸説あります。
例えば、九十八随眠(ずいめん)と十纏(てん)というそれぞれ98,10の煩悩があり、それらの和として108煩悩があるとされる説。
他にも、人間が持つ欲望や心の汚れは、すべて6つの感覚器官、六根(ろっこん)からもたらされ、それらが感じとる感覚からくる36個の煩悩に、前世、今世、来世の3つの時間軸をかけて108つあるという説。
また、108という数字は単位ではなく、単に煩悩の数が多いとされる説など多岐にわたります。
しかし、これらを子供にわかりやすく説明するというのは非常に難しいです。
そもそも我々大人もどこまで理解できるかすら怪しいですからね‥( ̄▽ ̄;)
そこで、私が思う子供への良い108の煩悩の伝え方は、
「ゲームしたい、お菓子が欲しいみたいな、叶わないと苦しくなり、叶っても次が欲しくなってしまって苦しくなってしまう。そんな苦しみの元になる気持ちが沢山あるんだよ」
「そんな気持ちを失くすために鐘を鳴らすんだよ」
といった感じで伝えれば完璧だと思います。
しかし、最近のお子さんは勘の鋭い子がいるのも事実です。
もしかすると次のような疑問がくるかもしれません。
「ひゃくはちのぼんのうの意味はわかったけど、何でおおみそかなの?」と‥
そんな時のために”なぜ除夜なのか”という意味についても解説し、子供向けの伝え方も考えていきます!
除夜って何?なんで大晦日に鳴らすの?
そもそも除夜とは一体なんなのかについて解説していきます。
除夜とは、除日(じょじつ)の夜のことを言います。
「除」には、古いものを捨てて新しいものに移るという意味があります。
除日とは、一年の一番最後の日という意味を表し、大晦日のことになります。
ではなぜ除夜なのかについて解説していきます。
この事についても説がいくつかあります。
まずは除夜の鐘、厳しい修行と効果同じ説です。
日頃から修行僧が仏教の修行を積むことによって、煩悩を取り除き解脱(悩みや苦しみや迷いから解放された状態になること)する事ができるのですが、除夜の鐘には厳しい修行を積んでいない我々においても、こうした心の乱れや汚れを祓う力があるという信仰が現在まで伝わり、除夜の鐘の儀式となって続いてきたという説です。
この説の子供への伝え方としましては「煩悩を取り除くには本当は厳しい修行が必要なんだけど、除夜につく鐘には、修行してない人でも心の汚れを取り除く力があるからだよ」といった具合でいいと思います。
続いての説は正月のお盆の名残説です。
仏教では、お正月にはお盆と並んで年に2回先祖を祀る儀式がありました。
これが歴史が進む間に「お正月は年神様にその年の豊作を祈る」という神道の信仰へと移っていき、仏教の古い儀式としては夏のお盆のものだけが長く受け継がれていくようになりました。
元々あった仏教の風習のうち、正月に関しては、除夜に鐘をつく風習だけが今に残ったという説です。
こちらの説の子供向けの説明としましては「昔はご先祖に感謝するためのお祭りがあったんだけど、時代が進むとそのお祭りがなくなってきて、鐘を鳴らす風習だけ残ったんだよ。」でいいと思います。
これらの説の説明しやすい方だけをお子さんに伝えるのも良いですし、「どっちを信じる?」と両方説明するのもアリだと思います。
何で鐘を鳴らすと煩悩がなくなるの?
さぁこれで完璧!と思っていてはいけません。
好奇心が強い子供は更にこう詰め寄ってくるかもしれません。
「そもそも何で鐘を鳴らすと、煩悩が無くなるの?」と‥。
ということで、鐘を鳴らすと煩悩がなくなる理由について解説していきます。
お寺の鐘は普段は朝夕の時報として用いられたり、法要の開始を知らせる際などにも用いられています。
ただし、こうした用途だけでなく、鐘の音そのものには、苦しみや悩みを断ち切る力が宿っていると考えられており、仏教の大切な道具として除夜の鐘にも用いられます。
また、お寺の鐘の名前は別名「梵鐘(ぼんしょう)」と言います。
この梵鐘の梵は、梵語(サンスクリット)で「Brahma=神聖・清浄」を音訳したものと言われており、鐘の音や名称に込められた意味に煩悩を断ち切る意味が込められています。
子供への説明方法は「鐘の音や名前の意味に、キレイにする意味が込められているからだよ。」と言えばいいと思います。
除夜の鐘の音は平和である証
ここまで来ればほとんどのお子さんの知的好奇心を満たすことができると思います。
ただ最後に子供に伝えたい重要な「除夜の鐘の歴史」があります。
除夜の鐘の長い歴史の中で一時期だけ、日本全国の除夜の鐘が鳴らない時がありました。
それは「第二次世界大戦」の間です。
戦争で武器を作るために金属回収令が施行され、お寺の鐘も回収されてしまいました。
鐘が無くなったお寺は、太鼓を鳴らすなどの工夫をしてお正月を迎えました。
つまりこうして我々が毎年除夜の鐘を突けるのは、平和という前提があるためです。
そこでお子さんにも是非こうした歴史も伝え、平和な新年を迎えていただければと思っています。