一度でいいから高級料亭で和食を食べてみたいものです。
伝統ある格式高い日本建築で、美しい日本庭園を眺めながら食事をすることは憧れでもあります。
こんな静かな贅沢は、日本人ならではの発想でもあります。
日本庭園といえば、静けさの中に響く、「ポーン」という竹の音にも風情を感じます。
その風情ある音を生み出す、「ししおどし」について詳細に知っている人は少ないです。
本記事では「ししおどし」の名前や漢字の由来に着目し、その歴史を説明します。
あの不思議な装置の奥深い歴史について学びましょう。
ししおどしの知られざる歴史を知ろう!!!
まずはししおどしの名前・漢字の由来について説明します。
【ししおどしの名前・漢字の由来】
ししおどしの名前に使われる漢字について調べると3パターンほどが主に出てきます。
「獅子脅し」、「獅子威し」、「鹿威し」と獅子又は鹿の漢字を使用したものの3つになります。
単純な漢字読みでは「獅子(しし)」の方がしっくりきますが、実は「鹿威し」こそ正式名称です。
ここで使われる「鹿(しし)」はイノシシや鹿のことをまとめて表す漢字になります。
また「威し(おどし)」の部分は相手を威嚇する、または高圧的な対応で相手を遠ざけることを意味しています。つまり、漢字そのまま意味で言えば、猪や鹿を威嚇して遠ざけるためものということになります。
この意味から使われていた状況としてはイノシシや鹿から何かを守っている状況となります。
実は鹿威しというのは猪や鹿などから農作物を守るために威嚇する道具の総称のことを指す言葉なのです。
具体的な道具をあげれば、かかしや防鳥用の鳴子やCDなども鹿威しであると言えます。
では日本人が鹿威しと聞いて思い浮かべる、あの竹の装置はなんと呼ぶのでしょうか。
【ししおどしが指す意味の変化】
次に鹿威しと一般的に呼ばれている、あの竹の装置について説明します。
あの竹の装置は「添水(そうず)」と言います。
漢字の通り、水を竹に添って流し、その重さの変化により竹を勢い良く傾けて石に打ち、音を出します。
この「ポーン」という音を出すことによって鹿やイノシシを威嚇するので、鹿威しの中一つとなります。
元々は田園において用いられ、田んぼの水を利用することで音を出していました。
田んぼをイノシシや鹿などから守るための威嚇装置であったのです。
この添水が日本庭園に初めて用いられたのは、京都にある「詩仙堂」というお寺であると言われています。
江戸時代の初期に徳川家の家臣であった石川丈山が隠居のために造築した場所になります。
石川丈山は優れた文人でもあり、風情を重んじて自然豊かな場所を選びました。
そのため、その庭園にはイノシシや鹿が侵入することもよくありました。
そこで「添水」を庭園内に設置して、イノシシや鹿の侵入を防ごうと考えたのです。
この詩仙堂の日本庭園自体の美しさは現在でも高く評価されています。
そこへ「添水」独特の水や竹の音が加わることで、独自の風情ある空間を生み出しました。
それでは風情ある風景と共に、和を感じさせる音をお楽しみ下さい↓
当時では珍しかった「添水」の庭園への設置は詩仙堂の評判と共に瞬く間に広がっていきました。
その後、伝統的な日本庭園には「添水」が欠かせないものへと変化していきます。この変化の中で「鹿威し」の名前が誤って人々に伝わり、「添水」の名前がマイナーへなってしまったのです。
現在では伝統的な日本庭園にあるものについては「添水」の名前が使われることもありますが、基本「鹿威し」と呼ばれるようになりました。
確かに「鹿威し」の方が名前にインパクトがあって覚えやすいです。
よって本来の農作物を守る威嚇道具という意味から、竹の音を使った風情を演出する装飾物へと「鹿威し」の意味が変化していったのです。
【ししおどしって効果あるの??】
そもそも「鹿威し」もしくは「添水」に動物を威嚇する効果があったのでしょうか。
竹の音を定期的に鳴らして人が居るようにして威嚇することが主な効果になります。
しかし、これだけでは動物を農作物や田んぼから遠ざけることは出来ないです。
なぜなら動物には学習能力があり、定期的に音を鳴らすだけでは音に慣れてしまうのです。
例えば、賢いカラスは添水に最初は驚きますが、その後人が居ない狙いどころだと理解するでしょう。
また人がいつ農作物や田んぼに現れるかも学習し、覚えている場合もあるようです。
このことから、鹿威しが本来の意味以外に役割を見つけたことは幸運だったと言えます。
ししおどしの音にこそ、その本質がある!!!
ここまでししおどしの名前・漢字の由来とその意味の変化について説明しました。
鹿威しは時代の変化に合わせてその役割や示す意味を変えていったものです。
本来の意味とは異なるものであろうと、その竹の音色には他にはない魅力があるのは事実です。
鹿威しの美しい竹の音と流れる水の音に耳を傾けながら、意味を変えてしまう程の風情をそこに感じてみましょう。きっと、あなただけの和が深まります。