日本の伝統芸能を支える職人はとても格好良いものです。
代々受け継がれている伝統や技術を継承し、その人にしか出来ないことをしています。
まさに日本らしさを維持し続けている立役者です。
筆者の友人にも日本伝統の陶磁器職人に弟子入りしている人がいます。
この陶磁器の工房は代々人間国宝とされる職人を輩出しているそうです。
そんな工房では、日々、その陶磁器の特徴からその地域の土、そして日本の陶磁器に至るまで勉強しているとの事です。
受け継ぐべき弟子たちも並大抵でない努力をする必要があるのです。
そんな日本の職人たちの素晴らしい技術の中でも、今回は花火の打ち方について紹介します。
花火の打ち方(打ち揚げ方法)ってそんなに知られていません。
ましてや、その難易度を正しく理解することも中々ありません。
本記事では日本の伝統、花火を支える職人たちの技を分かりやすく説明します。
花火の基本的な打ち揚げ方法
まずは花火の打ち揚げ方法の基本的な部分について説明します。
花火の火薬玉、通称「星」は自力で空に打ち上がる訳ではありません。
打ち揚げ用の火薬の力で空に打ち揚げるのです。
しかし、火薬玉の下に打ち揚げ用の火薬を置いて着火したらどこに火薬玉が飛んでいくか分かりません。
しっかり真上に打ち揚げるために筒を設置します。
筒の中に打ち揚げ用の火薬、火薬玉の順に設置します。
火薬玉は導火線を下に向けて設置します。
打ち揚げ用の火薬に着火し、火薬玉が空に勢いよく飛び出します。
打ち揚げ用の火薬への着火と同時に火薬玉の導火線にも着火します。
その後、空にて火薬玉の導火線が焼き切れ、火薬玉が開きます。
打ち揚げ用の火薬の力で飛び出しているため、火薬玉の速度は打ち揚げ後、徐々に遅くなります。
この速度の変化と火薬玉の導火線が焼き切れるまでの時間を調整する必要があります。
この時間調整にこそ、それぞれの職人の経験や技が活かされています。
色んな打ち揚げ方法
花火の打ち揚げ方法は、実は一つではありません。
あなたが見た花火大会を思い出してみて下さい。
同時に様々な花火が打ち上がったり、連続で打ち揚がり続けることもあったでしょう。
実はこれは舞台裏で、職人たちが工夫を凝らして打ち揚げ方法を工夫しています。
本記事では大きく分けて、3つの打ち揚げ方法について説明します。
⚪︎単打ち
まず「単打ち」と呼ばれる打ち揚げ方法を説明します。
これは一発ずつ打ち揚げる方法になります。
主に大きな火薬玉やキャラクターや絵を型取ったものはこの方法を用いるのが一般的です。
一発ずつ、打ち揚げ用の火薬と火薬玉を設置し、着火します。
昔は種火を投げ入れて着火していましたが、事故が起きやすい方法でした。その為、現在では電気での着火装置を設置し、遠隔操作にて着火するのが主流で、法令でも推奨されています。
一方で、電気での着火にはコストがかかる為、地域によっては未だに人の手によって直接着火を採用しているところもあります。
⚪︎早打ち
次に「早打ち」と呼ばれる打ち揚げ方法を紹介します。
この方法は一本の同じ筒から繰り返し、連続で打ち揚げる際に使用される方法です。
あらかじめ鉄板やチェーンをガスコンロ等で赤くなるまで熱しておきます。
熱した鉄板やチェーンを筒の底に設置します。
取っ手と打ち揚げ用の火薬を取り付けた火薬玉を筒の上で手離し、筒の中に落とします。
その後、熱した鉄板等によって、打ち揚げ用の火薬と火薬玉に着火され、打ち揚がります。
これらの作業工程を繰り返し行います。
この方法は比較的安価に多くの花火を打ち揚げることができます。
一方で最もミスが出やすく、危険な打ち揚げ方法です。
打ち揚げのタイミングも職人の腕が問われ、直接筒に火薬玉を入れる為、危険も隣り合わせです。
熟練の職人だけが行える打ち揚げ方法と言えるでしょう。
⚪︎スターマイン
最後に「スターマイン」と呼ばれる打ち揚げ方法を説明します。
数多くの花火を連続で打ち上げる際に適した打ち揚げ方法です。
現在の大きな花火大会では最も採用されている打ち揚げ方法になります。
打ち揚げる玉の数だけの筒を準備し、それぞれに打ち揚げ用の火薬と火薬玉を設置します。
そこに導火線をあらかじめ設置し、タイミングを合わせて遠隔操作で点火します。
この導火線を電気導火線を用いるのがトレンドとなっています。
電気導火線を用いることで、打ち揚げタイミングをプログラミングし、そのタイミング通りに自動で点火できるようになったからです。
これによって音楽や映像に合わせて正確に打ち揚げることが可能になりました。
一方でより多くの筒や点火装置などの資材を必要とするため、コストがかなりかかります。
よって人気の大きな花火大会ではよく用いられるのです。
花火の打ち揚げ方法を知って、より「通」に観れる!!
ここまで花火の打ち揚げ方法について説明しました。
打ち揚げ方法も様々な事情を抱えながら発展してきました。
そこには職人たちの努力や、残念な打ち揚げ事故も糧になっています。
安全にかつ、より楽しい花火を楽しめるように裏で技をみせる職人たちを覚えておいて下さい。
きっと花火を観る目がより「通」な感覚に近づくことでしょう。