漆って良いですよね♪ 凄く色に深みがあって、特に黒色の吸い込まれそうな光沢が好きです。
でも、一方でそんな漆は非常に高かったりします。
そんな時に、目につくのは安いカシューと呼ばれる、似たようなもの。
でも、ただ安いだけかと思ったら違いはそれだけではありません!
実は、この違いが漆という文化を考える上で、非常に重要なんです。
そこで今回は、この違いを3つの点で比較していきます!
違いは固まり方
ところで、漆の乾燥のさせ方をご存知ですか?
その方法は漆室(単に室と呼ばれることもあります)という、湿度70~85%、温度24~28度くらいのところで乾燥させます。
これを博物館で知った時、「いや、めっちゃ湿気てるやん⁉︎」と思わず突っ込みそうになりました。笑
でも実は、漆の乾燥というのは、ウルシオールという主成分がラッカーゼという酵素の働きによって固まっていくことなんです!
そして、この反応を起こすために漆室のような環境が必要となるわけです。
ちなみに、このウルシオールというのは、三上喜三郎によって命名され、真島利行によって構造決定がされました。
というわけで、ウルシオールなんて、いかにも日本人がつけましたっていう名前なんですね^^
こういう実に化学的に興味深い反応に、理系の私としてはトキメいてしまいます!
それに対してカシューは、この主成分は似ているのですが、酵素が無いのでそのままでは固まりません。
その為、酸化剤を加えることによって固まるようにしたのです。
それで、特徴としては漆室のような施設がいらず、自然乾燥で固まることがあげられます。
なので、漆塗りの工芸体験なんかでは、取り扱いが簡単なカシューが使われることがあります。
この点に関しては、漆がカシューに対して一歩譲るところでしょう。
耐久性はどのくらい?
漆の耐久性は半端ないです。なにせ、千年単位で残っている工芸品があるんですから!
この耐久性に関しては、あらゆる塗料の中でもずば抜けています。
もちろん、総合的に見ればカシューよりも漆のほうが優れています。
しかしながら、全く弱点が無いわけではありません。
最も致命的な弱点は日光、つまり紫外線に弱いことです。
なので、漆は紫外線が当たると、急激に劣化してしまいます。
その為、保管する際は日光に当たらないところで保管するのが良いでしょう。
あと、あまり乾燥しすぎる所に置いておくと、割れなどの原因になりますので、ある程度湿度のあるところで保管してください。
ちなみに、漆の硬化はかなり長い期間続くので、保管状態が良いとより傷つきにくくなっていきます。
では、一方でカシューはどうなのかというと、こちらは耐光性があります。
なので、価格も漆に比べて安いですし、そういった点も含めると、カシューのほうが扱い易い言えます。
ですが、漆の方は丁寧に扱うと、長い間使え、その間により味わい深くなる経年変化が楽しめます。
これは、カシューには無い楽しみ方です^^
手軽さのカシューか、経年変化の漆か悩ましいところですね…f^^;
色や見た目
「塗った時どう見えるか」
これは塗料を評価する時に最も重要となる部分でしょう。
それで、漆とカシューの違いなのですが、どう違うかと言われれば、分かる人には分かるし、分からない人には分からないと言うしかありません。
はっきり言ってしまえば、そんなに違いが分かるものではないんです。
ただ、私自身としては、漆の方がカシューより吸い込まれるような、上品な光沢に見えました。
もちろん、その道の人ならば、はっきりと違うという人はいます。
それと、これまた大事な色の種類ですが、これはカシューのほうが自在に選べます。
こうやって、比較してみると見た目の違いがあまり分からないのであれば、価格が安くて、色の種類の方なカシューのほうが優れているような気もします。
ですが、経年変化による色の変化を楽しめるという、非常に面白い特性を持っている漆も、やはり捨てがたいところがあります。
カシューは安くしただけではない⁉︎
・最大の違いは乾燥させる工程の固まり方
・総合的な耐久性では漆が優れるが、耐光性ではカシューが優れている
・見た目の違いはそれほどなく、色の種類はカシューが豊富
こうして比べてみると、それぞれ別の個性を持っていることが分かります。ですので、漆を主体とした文化の裾野を広げるのがカシューという「役割」の違いと考える必要があるでしょう。
そして、そのように考えたほうが、漆文化の今後を考える糧になるのではないかと思います!