春と秋になると、野良猫を保護した、子猫が衰弱しているのを見た、という話を耳にします。
猫は春と秋の2回、出産の時期を迎えます。
飼い主が居ない野良猫は、自由に繁殖行動ができるため、放っておくとどんどん増えます。
繁殖時期は鳴き声もうるさくなり、猫が苦手な人にとってはつらい時期となります。
そこで今回は野良猫と保護という、少し真面目なお話をご紹介します。
可愛い・可哀相だからは理由にならない
筆者も今年、野良猫を保護しました。
母が可哀相だからと餌づけをしてしまったのです。
その結果、春に4匹の子猫を出産しました。
ところが、母親が目を離した隙に、どこからか現れたオス猫が子猫を食べようとしたのです!
猫は自分で生んだ子であっても食べることで知られています。
子猫はカラスや他の猫、動物の格好の獲物になるのです。
筆者は母の餌づけを禁止し、保護団体に相談をしました。
そして、捕獲器を借りて、数日かけて猫を保護し、うち3匹の子猫は保護団体に預かってもらいました。
母猫と1匹の子猫は現在も家にいます。
可哀相だからと餌をあげる人がいますが、不用意に餌づけし、野良猫を増やす方が可哀相なんです。
野良の子猫の生存率は、飼い猫に比べ驚くほど低く、結果つらい思いをさせることに繋がるからです。
猫は成長が早く多産
子猫は約半年で親離れの時期を迎え、繁殖ができる状態になります。
親子、兄弟であっても繁殖行動をする上、年に2回出産します。
1度の出産で3~4匹を生むので、環境によってはネズミ算式に増えていきます。
始めは1匹だったのに、気付いたら手がつけられなくなるほど増えてしまった…というのはこのためです。
飼い猫であっても、避妊・去勢をしていない状態で、外出ができる猫であれば条件は同じです。
知らないうちに野良猫と繁殖行動をしている可能性もある訳です。
事実、今回筆者が保護した猫も、父親猫は近所の人の飼い猫でした。
避妊・去勢していない猫は外へ出さない方が賢明です。
病気や臭い、他の動物への影響
子猫が小さいうちは母猫の母乳と、母猫が与えた餌で育ちます。
狩りを覚えるころになると、昆虫やネズミなど生き餌を獲るようになります。
その結果、人家の花壇や庭に侵入してしまうことがあります。
そして、外で排泄をするので臭いと排泄物が残ります。
ネズミや昆虫を食べたり、草むらを歩くことで、人にもうつる病原菌を保有することもあります。
有名なところでは、マダニ、ノミ、猫回虫と呼ばれる寄生虫などです。
残念なことに、筆者が保護した母猫も猫回虫がいました。
お腹に虫がいると、餌を食べても痩せてしまうんです。
母猫が元気でなければ、お乳も出ませんし、母乳から寄生虫がうつることもあります。
他の動物に狙われて捕食された場合、その残骸が放置されたりもします。
筆者は今年、その残骸を見ましたが…正直怖かったです。
さらに、猫も狂犬病になることが報告されています。
狂犬病の特効薬は無く、人にうつると助かる見込みはほとんどありません。
このように、野良猫が増えると、さまざまな面で問題が生じてしまうのです。
野良猫を保護したときの対処法
では、野良猫を発見したときの対処方法をご紹介します。
野良猫は大変警戒心が強く、人に見つかると、母猫はより安全な場所へ子猫を運びます。
子猫だけしかいない状態で、衰弱している様子なら、まずは子猫を先に保護しましょう。
ダンボールに不要な布やバスタオル、新聞紙などを敷いて、保温できる状態にします。
子猫でもシャーっと牙をむいたり、爪でひっかいたりするので注意してください。
万が一、咬まれたり、引っ掻かれたら速やかに病院を受診してください(人間の病院ですよ)
おすすめは、大きめの洗濯ネットに入れることです。
猫は暗くて狭い所が好きなので、箱の上からバスタオルや毛布をかけると良いです。
牛乳はお腹を壊すので、水を置いてあげましょう。
家で飼う場合は、動物病院で寄生虫や健康状態を診てもらってください。
自分で飼えない場合は、保護団体に相談するのも良い方法です。
各地域の団体の制度にもよりますが、捕獲器の貸し出しや、猫の引き取りをしてくれます。
TRNという考え方とサクラネコ
野良猫と保護というキーワードで検索すると、TNRという言葉が見つかります。
これは、どうぶつ基金という団体が動物愛護活動の基軸としている、野良猫を減らすための活動です。
意味は、Trap(捕獲)、Neuter(不妊去勢手術)、Return(元の場所に戻す)の頭文字です。
不妊去勢手術を受けた野良猫は、手術を受けた証として、片耳の先をカットし、切り込みを入れます。
耳は痛くないのでご安心を。
この切り込みの形が、サクラの花びらに似ていることから、サクラネコと呼ばれます。
不妊手術を受けたメス猫は、不要な妊娠、出産の必要がなく、身体への負担が減ります。
去勢手術を受けたオス猫は、繁殖行動をしなくなり、大人しくなります。
また、耳をカットすることで、飼い猫と区別がつくようになります。
逆に、不妊去勢手術をしないまま飼い猫を放し飼いにしておくと、捕獲されてしまう恐れもあります。
飼い猫が自由に外をお散歩できるようにと思うのであれば、手術は済ませておいた方が賢明でしょう。
人と共存できる社会に
地球で生活する生き物全てに、生きる権利があります。
できれば、人と動物が穏やかに共存できる社会が望ましい形です。
可哀相だからと餌をあげるだけでは、解決にはなりません。
また、飼えなくなったからと外へ離すことは犯罪になります。
これを機に、野良猫を見かけたら、この記事を少しでも思い出していただけたら嬉しいです。