たまにニュースなどで、能や歌舞伎の人間国宝と呼ばれる人たちが取り上げられていたりします。
しかし、人間国宝は能や歌舞伎の人に限られるのかというと、そうではありません!
そこで、今回は人間国宝にはどんな人が選ばれて、人数はどんな風に決まっているのかをご紹介します♪
特に人間国宝の人数を決める意外な理由は必見ですよ!
そして、これらのことを知れば文化を守るということを、より深く考えれれるようになれます!
人間国宝って何?
人間国宝を理解するためには、まず文化財の種類について知っておく必要があります!
また、以下の文化財の種類は日本の文化財保護法における分類です。
- 有形文化財:建築物、美術工芸品や古文書など形があり、歴史や芸術或いは学術上価値の高い文化的所産
- 無形文化財:伝統芸能や工芸技術など形がなく、歴史や芸術上価値の高い文化的所産
- 民俗文化財:衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能及びその為に用いられるもの
- 記念物:古墳や城跡などの史跡、庭園や景勝地などの名勝、動植物や地質鉱物の天然記念物の総称
- 文化的景観:地域の風土とそこに住む人の営みの相互作用によって生み出された景観。棚田や里山など
- 伝統的建造物群:周辺環境と調和し歴史的風致を形成する伝統的な建造物群。宿場町や城下町、集落など
この他に、埋蔵された状態で直接見ることは出来ない埋蔵文化財や、文化財の保存や修理をする技術などを選定保存技術として文化財保護法では保護の対称としています。
そして、文化財はここから更に細かく分類されるのです。例えば、民俗文化財は民間に昔から伝承する文化に関するもので、その中には有形、無形の両方が含まれていてそれぞれ分けて分類されます。
それで、人間国宝はこの中の無形文化財で、特に重要な重要無形文化財を保持する個人に対する通称です♪
なので、通称であり正式名称ではありません。ただ、公的機関も使う広く一般的な呼び方にはなります。
また、個人の認定は各個認定、2人以上が一体となって技を体現する場合は総合認定、多数の人が関わり個人ではなく全体で技を体現している場合は保持団体認定と3つの認定方式があります。
つまり、人間国宝はこれらの3つの内、各個認定された人のみを指す言葉なんです^^
こんな風に考えてみると、人間国宝って文化財の中のほんの一部にしか過ぎないことが分かります。
ちなみに、単に国宝という場合は正式名称になり、有形文化財の中の重要文化財から世界的に見ても価値の高いものが指定されるのです。
人数は何で決まっている?
人間国宝の人数は、なんと国の予算規模によって決められています!
この予算は何の為かと言うと、人間国宝に認定されるともらえる年200万円の特別助成金のことです。
これは重要無形文化財保護のために支給されるお金で、弟子の育成や技術向上などに使われます。ようは、無形なのでそのもの自体にお金を使うことが出来ないので、その保持者を支援する形になっているのです。
また、保持団体等にも伝承者育成事業や公開事業に対して、その経費の一部を助成しています♪
なので、人間国宝に当てられる予算は無形文化財保護の中の一部なのです。
それで、その予算は2018年は2億3200万円になります。つまり、200万円で割り116人が定員となるのです!
ちなみに、1994年までは定員は70名でした。今の定員数116名になったのは2002年からのことです。
分野ごとの数は?
人間国宝に認定されるのは歴史または芸術上価値の高いもので、途絶えてしまいそうなものはより重点的に保護されます。
また、分野が偏ってしまうのも問題なので、そうならないよう配慮して選ばれているのです。
それで、平成30年1月1日時点における分野ごとの人間国宝の人数は以下のようになっています♪
- 能楽:11人
- 文楽:6人
- 歌舞伎:9人
- 組踊:4人
- 音楽:22人
- 舞踊:3人
- 演芸:2人
- 陶芸:11人
- 染色:16人(重複して認定されているので実際の人数は15人)
- 漆芸:10人
- 金工:10人
- 木竹工:7人
- 人形:2人
- 手漉き和紙:2人
能楽から演芸までが芸能の分野で57人、陶芸から手漉き和紙までが工芸技術の分野で58人(重複分を除いたら実人数は57人)になります。
なので、芸能と工芸技術の分野でも偏らないように配慮されていることが分かります。
また、音楽の分野が多いように見えますが、その中に尺八や琵琶、長唄や浄瑠璃などいろいろ詰め込まれているのでやや多くなるのです。
つまり、どこも突出して多くはならないのですが、その分どの分野もそれほど多くの人は選ばれません。
文化を守る難しさ
日本の文化財政策は、より多くの文化財を保護できるように範囲が広げられてきました。その結果として、文化財の様々な種類が生まれていったのです!
しかし、文化に関するもの全てを覆い尽くすことは難しいです…
例えば、人間国宝は定員が116名と限られ、実はそれ相応の実力があっても認定されない方も沢山います。
けれども、定員数を増やすために予算規模をただ増やせばいいわけではありません。やはり、補助金頼みになってしまうのも文化のあり方として問題があります。
なぜなら、文化は人々の営みの中にあるもので、我々自身が文化の担い手の主体であり、何をどう守るかは我々自身に委ねられているからです♪
つまり、お金を使い形だけ保存されていても、人々の営みから切り離されてしまっては意味がありません!
なので、人間国宝も大切ですが、それだけに囚われない幅広い視点で文化を考えることが必要になります。