和食は今や世界的にブームになっている料理です。
2013年にはユネスコの無形文化遺産として、「和食」が日本の伝統食文化として登録されました。
日本食の栄養バランスの良さや繊細な味付けは独自の魅力です。
食材そのものを活かす味付けや日本独自の調理法も世界的に注目を受けています。
筆者の住むヨーロッパでは、寿司を始めとした日本料理屋が爆発的に数を増やしています。
そんな和食において欠かせない調味料が醤油です。
和食の広がりとともに醤油の知名度も上がっています。
そんな醤油はどのように作られているのでしょうか。
醤油のルーツと醤油づくりの工程3段階を説明します。
醤油ってどうやって作るの、、、?
まずは醤油のルーツを簡単に説明します。
【醤油のルーツ】
醤油のルーツは「醤(ひしお)」と呼ばれ、古代中国で生み出されたものです。
醤は穀物や魚、肉に食塩などを加えて発酵させた調味料、及びおかずの総称です。
この醤は縄文時代から日本において食べられていました。
奈良時代まではご飯のおかずとして重宝され、室町時代からは現在のような醤油が生産され始めました。
醤油の生産を家業にして、設備なども確立されたのは室町時代後期です。
昔から日本の食卓を支えてきたのです。
【醤油づくりの工程①原料準備と麹作り】
次に醤油づくりの第1段階である、原料準備と麹作りについて説明します。
醤油の原料となるものは小麦・大豆・塩のみです。
意外とシンプルな原料を手間暇かけて美味しい醤油に仕立てていきます。
原料の準備として小麦を炒り、大豆を蒸しておきます。
その後の麹作りの際に、麹菌が小麦や大豆に入りやすいようにしておくためです。
そして麹菌を小麦や大豆に加えて、麹菌をより繁殖させます。
麹菌はとてもデリケートな為、約3日間は寝ずに管理し続ける必要があります。
またこの麹菌の元気良さの度合いによって醤油の質が変わってきます。
醤油の出来が決まる、大切な工程であると言えます。
こうして麹菌が繁殖した小麦、大豆が「醤油麹」として次の工程に進みます。
【醤油づくりの工程②諸味作り(発酵・醸成)】
次の工程は「醤油麹」に塩水を加えて「諸味(もろみ)」を作ります。
塩水を加えると麹菌から出る酵母菌や乳酸菌によって原材料の小麦、大豆が変質していきます。
この変質自体を発酵、醸成と呼びます。
大豆のタンパク質がアミノ酸に、小麦のでんぷんがブドウ糖に変化します。
このアミノ酸、ブドウ糖が醤油の旨味の元となります。
この諸味の発酵、醸成工程は長い時間を必要とします。
酵母菌、乳酸菌の動きが活潑になる温度や湿度を人工的に管理して約半年待ちます。
その後、約1〜2年ほど四季の自然の温度変化に任せて待ちます。
職人は定期的に諸味をかき混ぜ、空気を入れることにより、菌の動きを促します。
これら長年の工程を経て、やっと諸味の発酵や醸成が完了するのです。
この時点で醤油はかなり手がかかる調味料であるとお分かりでしょう。
海外の人や一部の人は、原料絞って出てきた残り汁のような認識の人もいます。
しかし、実際は日本独自の発酵・醸成技術を凝縮した調味料です。
途方もない期間を細部にこだわってしっかり管理する、日本の職人魂が成せるものなのです。
【醤油づくりの工程③圧搾と火入れ】
そして醤油づくりの最終工程の「圧搾と火入れ」について説明します。
まず「圧搾(あっさく)」という作業は字の如く圧力をかけて搾り取る作業です。
前の工程で醸成しきった諸味から圧搾して醤油を取り出します。
諸味を布で包んで、圧力をかけて搾りかすと醤油に分離していきます。
この圧搾も均等の圧力で丁寧に何度も繰り返すことにより、余す事なく搾り取ります。
圧搾だけでも約3日〜7日間もかかります。
ここで分離された醤油は「生醤油」と呼ばれ、微生物も少なからず含んでいます。
この「生醤油」を加熱して微生物を除去し、醤油の色と香りを整えます。
生醤油への加熱作業が「火入れ」と呼ばれ、醤油の仕上げともいえる作業になります。
火入れの良し悪しも醤油の仕上がりにかかわるので職人の腕が試されます。
ちなみに市販のもので「生醤油」と呼ばれ、販売しているものもあります。
このような製品は圧搾後に加熱しない、特殊工程を経て微生物を除去したものです。
その為、火入れした醤油とは異なった風合いや味の醤油に仕上がります。
火入れ後は再度異物の除去を経て瓶詰めされ、製品として出荷されていきます。
醤油は果てしない手間と職人の技術の結晶
ここまで醤油のルーツと醤油づくりの工程について説明しました。
醤油はとても長い期間の手間がかかっていることが繰り返し伝わった事でしょう。
現在の工程も先人たちの失敗を経てかなり改良された「最善」であるはずです。
それでも最低でも約2年以上はかかる醤油はその手間に見合った価値があるものなのです。
そんな日本の発酵技術の賜物であり、職人の汗と涙の結晶である醤油をこれまで以上に味わって頂きましょう。きっといつもより深い味わいが広がるはずです。