お茶席に出てくる道具類には実におびただしい種類の道具があります。
掛け物や花入れのなど床飾りの道具から、水差しや茶碗などお点前の道具に至るまで余りもの多さに、その道具の名前や使い方を知るだけでも大変です。
この記事では、お茶を飲むだけなのに、それほどの道具がなぜ必要で、どういう意味があるのか?を解説していきます。
茶席を引き立たせるため!?
茶道精神の神髄を表す言葉として有名なのが「和敬清寂(わけいせいじゃく)」という禅語です。
「和敬」とは、茶道の作法で根幹として重んじられている茶道精神の基本で、その心は、お茶席における「和敬(心をおだやかにつつしみ深く保ち、敬いの気持ちをもつこと)」にあるとされています。
「静寂」とは、お茶席に関わる「茶室」、「露地」、「茶道具」などについて、主客の心を和ませ、静かに茶を点てて楽しませるために必要な心得を意味します。
もてなす側は、客を迎えるために床の間の掛け軸や花入れなどに時間をかけて気配りし、よばれた客は主(あるじ)が時間をかけて用意した心配りを察知しつつ、礼法に則った所作・動作により敬いの気持ちをもって応えることが大事です。
このような作法の意味については下記の記事で解説していますので、宜しければ合わせてお読み下さい。
このように、茶室を演出する茶器、掛け軸、花入れなどの道具には重要な意味があり、茶道の隆盛とともに数多くの茶碗や茶道具が作られてきました。
そして、茶道の道具の組み合わせには意味があります。
お茶席に出てくる道具類は、その大・小、和物・唐物など産地別、道具の姿などそれぞれが異なり、その取り合わせは無限とも言えます。
お茶席を催す主(あるじ)は、その季節や時間、お客の顔ぶれなど勘案して道具類の取り合わせに工夫を凝らします。
このような茶道が醸し出す高い芸術性と精神性が融合した精神世界は、単純にコーヒー・紅茶を喫茶する他の国々には存在しません。
茶道の道具の意味(その1)- 本席用具
お茶席の道具にはそれなりの意味があることは何となく分かりましたが、その道具がどこで使われるのか、一目見てもよく分かりません。
そこで、その道具がどのような場面で使われるのか、少し整理してみました。
茶道具にはその道具が使用される場所で分けると、
(1)本席用具
(2)待合用具
(3)露地用具
(4)水屋用具
の四種になると言われています。
(1)本席用具と(2)待合用具は客人の鑑賞の対象となるもので、(3)露地用具と(4)水屋用具は消耗品に区別されます。この中でも本席用具は茶席本室に用いられる用具で、茶道具の中で最も大事な道具類として位置づけられます。
これさえ知っていれば、うろたえることはありません。
○床飾りの道具
・掛け物(墨跡、絵画、古筆、侘び掛け物など)
・花入れ(金属、陶磁器、竹製品に区分され、和物と唐物がある)
○炭点前の道具
・釜、炉、風炉(初夏から秋にかけて炉のかわりに使用)
・香合(炭火点前で使う香入れ:炉には「つちもの」、風炉には木地、塗り物を使う)
・灰器、炭斗り など
○点前の道具
・棚(4畳半以上の間で用いる)
・水指、茶碗(天目茶碗などの唐物、井戸茶碗などの高麗物、美濃、唐津、備前、信楽、京焼など)
・茶杓(主として竹製)
・蓋置き、建水 など
○懐石の道具
・折敷(漆器の膳:向付、飯、味噌汁など置く)
・向付(膾物の器で陶磁器の小鉢)
・八寸(八寸の杉木地の器、酒肴を盛る)
・酒器、焼き物鉢、預け鉢 など
このようにしてみると、お茶席の場でよく見かける道具ばかりで、何となく納得してしまいますね。
茶道の道具の意味(その2)- 待合用具、露地用具、水屋用具
【待合用具】
掛け物(本席掛け物より軽いもの)
喫煙具(煙草盆、煙草入れ、キセル など)
振出し、吸出し茶碗(振出しの香煎、小あられを吸い出し茶碗の白湯に浮かせて嗜む)など
【露地用具】
外腰掛け、草履、腰掛け円座、露地柄杓、手桶 など
【水屋用】
茶筅、茶巾、柄杓、水壷 など
茶道の道具の意味(まとめ)
茶室という限られた空間に調和する「取り合わせ」のいい茶道具を調え、茶会の興趣を高める主の「点前」という鮮やかな手さばきによって、主と客がその時間と空間を一体感をもって共有することが茶道の世界の美の極地と言えます。
このような非日常の空間を演出するために茶器、掛け軸、花入れなどの茶道の道具には重要な意味があることを理解すれば、あなたが飲む一服のお茶の深みがさらに増していくでしょう。