1871年の明治には「断髪令」が出され、一般の人は髷が禁止されました。
しかし、明治政府の長官の中に相撲好きがいたため、令和の今になっても髷を結っています。
力士の象徴とも言える髷を切るというのは、いったいどういう意味があるのでしょうか?
髪の毛を切ると聞けば、一般的には失恋をイメージする人も少なくないと思います。
が、しかし、相撲の世界ではそんな理由で行われる訳ではありません。
今回は髷を切る断髪式の意味や方法について紹介します。
断髪式ってなに?
引退する力士の髷を切る儀式のことを断髪式といいます。
けじめをつける意味として、力士にとってもファンにとっても大切なイベントです。
その手順は、力士の髷にみんなで少しずつ鋏(はさみ)を入れていきます。
多い人で、300人以上が参加する力士もいるようです。
家族や友人、応援してくれていた関係者が土俵にあがっていく姿は感動もの。
そして、最後にその力士の親方が切り落とすのです。
このことを、止め鋏といいます。
○両国国技館で断髪式ができる力士とは
断髪式はすべての力士が、聖地、両国国技館で行えるわけではありません。
引退後、年寄を襲名できる力士に限ります。
年寄とは、公益財団法人日本相撲協会の構成員のことです。
年寄襲名の資格は、関取を通算30場所務めた力士です。
つまり、実績を積んだ力士だけが両国国技館で断髪式を行えるのです。
両国国技館で断髪式が行えない力士は、部屋やホテルの宴会所などで行います。
○断髪後の髪はどうなるの?
切り取られた髷は、普通はガラスケースに入れられて保存されます。
相撲博物館のような施設で展示されていることもあります。
記念品として保管や展示をする人もいれば、ゴミ箱に捨ててしまう人も…。
完全燃焼で引退を迎えることができる力士ばかりではありませんもんね。
断髪式を終えた力士のBefore After
断髪式を終えると、力士は整髪をしてもらえます。
髷を切りっぱなしでは終わらないのです。
一般の人のような髪型にするそうですが、どの髪型にするのか悩む力士も多いそう。
またファンからしても、どんな髪型にするのか楽しみですよね。
ここでは、整髪後の力士で印象に残った人たちを紹介します。
貴ノ岩 Before
前が貴ノ岩で、後ろは横綱白鵬。
少し緊張しているのか、表情が硬いですね。
貴ノ岩 After
整髪中の写真ですが、さわやかな髪型ですね。
引退後のすっきりとした表情がとても印象的です。
記憶に残る断髪式
ここでは、有名力士の断髪式の様子とその力士の活躍を紹介します。
相撲界をけん引してきた、元関脇旭天鵬の大島親方と稀勢の里について調べました。
断髪式を終えた引退した力士ではありますが、相撲に興味を持ってもらえると嬉しいです。
○2016年 初のモンゴル人力士 元関脇旭天鵬の大島親方
今となっては、モンゴル人力士が日本相撲の中心となっていると言っても過言ではありません。
現在、日本相撲協会に所属しているモンゴル人力士は、20名。
現在トップに君臨している、東横綱の白鵬(はくほう)、照ノ富士(てるのふじ)が有名です。
過去の有名力士でいえば、朝青龍(あさしょうりゅう)は、ご存じの方も多いと思います。
ここまで、モンゴル人力士の活躍ができたのも、大島親方という先駆者がいたおかげ。
大島親方は、日本とモンゴルの国交改善の一種として、1992年にモンゴル1期生として土俵を踏みました。
同期は6名、しかし、そのうち3名は3ヶ月で帰国。
しかも残った、大島親方以外の2名は、1度はモンゴルに逃げ帰ったことがあるそうです。
それでも、大島親方の活躍する姿をみて日本に戻り、幕内の3役まで昇進することができたのです。
2012年には夏場所で史上最年長初優勝という輝かしい戦績を残しています。
そんな偉大な大島親方の断髪式では、両国国技館で、約400人が鋏入れをしました。
もちろん、朝青龍や白鵬も参加し、モンゴルのスターの引退を惜しみ、祝いました。
断髪式では、娘さんからの手紙もあり、涙の断髪式でした。
引退後、しばらくたった2017年には、モンゴル出身力士として初めての師匠に。
引退してもなお、モンゴル力士の道しるべとして活躍しています。
○2019年 日本人横綱 稀勢の里
2019年9月に、元横綱の稀勢の里の断髪式は、約300人が髷に鋏を入れました。
横綱の白鵬や日馬富士、家族、支援者の参加がありました。
稀勢の里の活躍は、2010年に63連勝していた白鵬を止めたことが印象的。
その後もどんどん力をつけ、分厚く高いモンゴル勢に挑み続けていました。
その姿から、横綱への期待を集め、2017年に横綱になることができたのです。
しかし、横綱昇進直後の怪我により、戦績が思ったように振るいません。
結局、市場最弱横綱のまま、引退を決意したようです。
それでも、稀勢の里に対するバッシングはありません。
日本人でも横綱になれる!この希望を与えた力士を、誰もが愛していたのです。
断髪式を観てみよう!
断髪式は相撲においての引退式です。
力士は髷でいなければならない、というルールがあります。
そのため、何十年も共に頑張ってきた髷を切るというのは、とても大きな意味をもたらします。
本人、その関係者の人たちにとって、けじめをつけ新しい未来にむけて頑張るための儀式なのです。
相撲界の人々だけでなく、世間の人々に感動を与えた人物の断髪式は、格別のもの。
相撲に少しでも興味がわいてきた人は、調べてみるのもおもしろいかもしれませんね。