日本の伝統的な文化の一つ「落語」。
実は落語は関東と関西で違いがあったり、所属する協会が分かれていることをご存知でしょうか?
落語は知っていても、落語界の事情は知らないという人も多いと思います。
本日は、落語協会の分裂や歴史、関東と関西の違いなどについてご紹介しましょう!
関東と関西の違い
関東の落語は江戸(東京)落語、関西の落語は上方落語と呼ばれます。
どんな違いがあるか簡単にご紹介しますね。
●関東の落語●
江戸落語の特徴は、べらんめえ口調と呼ばれる「江戸弁」を使用します。
『するってぇと何かい?』
『ちょいとお待ちよ、おまいさん』
など、いわゆる時代劇で使われているような言葉使いです。
最も、全ての関東の落語家が江戸弁を使用する訳ではありません。
先日惜しまれつつ他界された、元笑点の名司会だった桂歌丸さんは浜っ子(横浜育ち)だったことを誇りに思い、古典落語でも江戸弁は使用しませんでした。
歌丸師匠についてはコチラの記事で詳しく解説しましたので、もし良ければ合わせてお読み下さいませ。
●関西の落語●
比べて関西の落語は江戸弁を使用しません。殆どが関西弁です。
また「膝隠し」と呼ばれる小さな木の机のような物が手前に置かれることもあります。
面白いのは、演目によって関東と内容が微妙に違うこと。
例えば「時そば」は「刻うどん」になりますし、「酢豆腐」は「ちりとてちん」と題名すら変わってしまうこともあるんです。
所変われば品変わるとは正にこの事ですね。
昇進制度
もう一つ大きな違いがあります。
それが「昇進制度」です!
江戸落語には、前座見習い→前座→二つ目→真打と徐々に出世する昇進制度があります。
出世魚みたいですね。
でも、上方落語にはそれがありません。
その理由は、大阪では漫才の方が人気があったとか、真打にふさわしいかどうかはお客が決めること、など諸説あります。
ただ、江戸落語のようにハッキリとした制度は無くても、香盤制度という序列は存在します。
落語協会の種類
落語には「落語協会」「落語芸術協会」「上方落語協会」など所属する協会があります。
ただ、必ずしも協会に属するわけではありません。
【落語協会】
戦前に東京落語会全体で立ち上げた協会の後継で、正統派といえる協会です。
定席(じょうせき)も鈴本演芸場や新宿末広亭、池袋演芸場など人気の寄席が多く、在籍する落語家も笑点の林家木久扇さんや、林家正蔵さん、金原亭馬生さんなど有名な人が多く居ます。
【落語芸術協会】
先日亡くなられた桂歌丸師匠が、この落語芸術協会の会長を務めていました。
古典落語だけでなく、新作落語も積極的に取り入れ、落語協会に新しい風や、若い人を呼び込む役割を担っています。
定席は浅草演芸ホール、新宿末広亭、池袋演芸場などで、在籍する落語家には、三遊亭小遊三さんや春風亭昇太さん、桂米助さんなどテレビでもよく見かける落語家さんが多く居ます。
【立川流・立川一門】
ためしてガッテンの司会でお馴染みの「立川志の輔」さんや、最近テレビでも活躍中の立川志らくさんなどの立川一門は落語協会に属していません。
立川流の生みの親、故立川談志師匠が落語協会を脱会して以降、立川流は独自の路線を辿っています。
そのため、立川一門は定席の寄席に出られません。(+_+)
立川一門の落語はホールや地方で行われる独演会で見る他はないのです。
【圓楽一門会】
立川一門と同じく、落語協会を脱会したのが五代目の三遊亭圓楽師匠と六代目の三遊亭園生です。
脱会した後は「大日本落語すみれ会」を結成し、現在の圓楽一門会に名前を変更しました。
【上方落語協会】
その点、上方落語はそういった派閥問題がありません。
殆どの落語家が上方落語協会に所属しています。
2006年には念願の定席が上方にも誕生しました。
六代目桂文枝師匠が中心となって「天満天神・繁昌亭」をオープンしたのです。
これにより、上方の落語家は安心して落語が語れる場所が出来たのです。
落語界の分裂騒動
江戸落語は落語家の人数も多く、歴史もあり、過去には様々な騒動がありました。
落語協会の分裂騒動について語ると少々長くなってしまうので、ここでは簡単にご紹介します。
◯二つの考え方
分裂のきっかけは、三遊亭圓生師匠と柳家小さん師匠の考え方の違いでした。
関西と違って昇進制度のある江戸落語界では、二つ目から真打になるまでの考え方が分かれていました。
一つは、長い間、二つ目で居る落語家を真打に上げ、真打をスタートライン(一人立ち)とする考え方。
もう一つは、実力が伴ってから真打にする(プロデビュー)という考え方です。
この考えの違いはずっと平行線を辿り、やがて我慢できない方が脱会し、分裂してしまった訳です。
どちらの考え方も間違っていないので難しいところですね…(´・ω・`)
ただ、将棋の世界でも、年齢制限や飛び級など実力が伴わないと昇段出来ないので、やはりプロの世界は甘くありません。
◯現在の真打昇進
現在の江戸落語界で真打になるには、落語協会のお偉方の許可が必要です。
しかし、いつまでも二つ目で居ると、二つ目の人口ばかりが増えて、真打が増えません。
しかも、真打にならない限り、仕事も増えませんし、弟子も取れません。
とは言え、真打になるには真打襲名披露を行わなければなりません。(`A´)ドウスリャイイノ
その際、御贔屓さんやお歴々の方々に配る記念品の準備、羽織を新調するなど、費用が掛かるんです。
この費用が高額で、二つ目時代に貯金をしておかないと泣く羽目になります。(´д`υ)ウェ~
二つ目はテレビやラジオにも出られますし、勉強会と称し、有料の落語会も開くことができるので、後は「落語の腕」次第です。
いずれにせよ、真打になるには大変なんですね〜(;´Д`A
真打になってからも
真打になってからは、長く落語家で生計を立てる人も居れば、テレビでバラエティやドラマに出演したり、ラジオのパーソナリティも兼ねたり、CM出演したりと自由に仕事ができるようになります。
人気者になればなるほど、入門したい弟子も増え、お金が必要になります。
現代では住み込みで学ぶ「内弟子」は少なく、「通い弟子」の方が増えてきました。
それでもお正月にはお年玉をあげたり、食事の面倒をみたりと師匠としての責任もあります。
真打になれたからゴールではないのですね。ここからが正念場なのです!
落語協会以外の真打
落語の世界では師匠の言うことは絶対です。ルールを破れば破門されます。
筆者は実際に破門された弟子も知っています。
師匠が落語協会に属していなければ、たとえ真打になっても寄席には出られません。
立川流がその代表です。
師匠の談志さんが落語協会を脱会し、今もそのまま立川流は独自路線を辿っています。
立川一門の初代、立川談志さんは、腕は確かな真打でしたが、所謂やんちゃ坊主。
談志師匠の一番弟子で、筆者も大好きな立川志の輔さんは、弟子の時代に相当苦労されたそうです。
そして自分が弟子を持つようになり、今度は弟子に苦労させられることに。笑
いずれにせよ、自分の入門する師匠が落語協会に属して居るか居ないかは、その後の活動に影響しますね。
落語界の背景を知ればもっと楽しめる
落語は古くからの伝統芸能で、歴史も長く、人を笑わせる「お笑い」を商売としているわけですが、高座を降りれば悲喜交交、色々とあるんです。
こういった歴史や背景を知ってから落語を見ると、より一層落語が楽しめますよ♪
あぁ、この人の師匠はあの人だったな。この一門はこんなことがあったな…と思いながら見るのもオツかもしれません( ´ー`)。о 0
気になる一門があれば是非調べてみてくださいねッ☆