東京国立博物館

意外に知られていない学芸員資格の難易度!知っておきたい資格取得までの道のり

博物館や美術館の展示を取り仕切っているのが学芸員です。

学芸員は動く辞書といえる各分野の専門家であり、スペシャルリストです。

今回は、博識が高いインテリな学芸員資格の実情を取り上げます。

ちなみに筆者も学芸員資格をもっています。

専門は歴史学です。取得者の立場からあなたに実体験をお伝えします。

学芸員になるための資格の取得方法

学芸員資格を取得する方法は3つあります。

①「学士」の学位+「博物館に関する科目」の単位を取得

②大学在学2年+「博物館に関する科目」を含めた62単位+学芸員補の経験3年

③学芸員資格認定を合格する

詳しくは下記の文部科学省のサイトを参考にして下さい。

  ⇨文部科学省:学芸員

筆者が学芸員資格を取得した方法は①です。

ここからは大学でどのようなことを勉強したかについて紹介します。

博物館に関する科目

兜筆者が大学で取得した「博物館に関する科目」は次ようなものでした。

生涯学習概論(2単位)

博物館概論(2単位)

博物館経営論(2単位)

博物館資料論(2単位)

博物館資料保存論(2単位)

博物館展示論(2単位)

博物館教育論(2単位)

博物館情報・メディア論(2単位)

博物館実習(3単位)「学内実習」と「館園実習」があります。

博物館学芸員の資格は、平成24年4月に改正「博物館法施行規則」が施行され、必要な科目・単位数が大幅に変更されました。

取得単位数が増えて大変でした。毎日単位取得のために週6も授業がありました。

さすがに授業数が多くて瀕死状態でした。

そのなかでも博物館実習が実技で楽しい授業でした。

筆者が体験した館園実習をお伝えします。

館園実習

平成27年8月 5日間

研修先 神社に属する博物館

指導者:学芸員、神職、研究員 6名

実習生:25名

実習内容

●1日目●
文化部長の代行による挨拶・オリエンテーション

博物館概要説明…博物館の沿革などの説明

博物館の特色・問題点…宗教法人による博物館について

博物館見学・列品解説…グループに分かれて、博物館に訪れて学芸員および研究員による博物館の解説

境内散策…学芸員による神社の境内の説明で、裏話もありました(笑)

写真撮影…一眼レフを使用しての撮影を実践です。

●2日目● 
資料の取り扱いについて 書籍…紙の種類、文化財保護、掛け軸の取り扱い方を学び、織田信長と足利尊氏の書状で実習生が掛け軸を実践的に取り扱いました。貴重なため緊張して生きた心地がしませんでした。

資料の取り扱いについて 金工…材料・製作技法についての講義で、鏡を実際に触れました。

資料の取り扱いについて 彫刻…仏像・仮面の取り扱い方の講義で展示物を実際に見ました。

資料の取り扱いについて 絵画…分類・調書の作成・取り扱い方の講義を受けました。

展示物で掛け方・巻き方、納め方を実践しました。

●3日目●
資料の取り扱いについて 漆工…技術・素地・蒔絵についての講義を受けて、実際に宝物に触れました。

資料の取り扱いについて 刀剣…日本刀の基礎知識の講義を受け、実演で刀の取り扱い方を見学しました。当時は刀剣乱舞が流行り始めたときでテンションがあがりました。

博物館の防犯・防火…境内・博物館の防犯対策、外国人観光客の対応についての実際の話でありました。外国人のマナーの悪さへの愚痴でした。

資料の取り扱いについて 梱包…梱包を実演でみて、甲冑を実習生1名がきて体験しました。甲冑を着て自慢をしたかった筆者です。

●4日目●
資料の取り扱いについて 文化財の保存と修理…保存・修理の基礎知識の講義を受け、実際に修復された仮面等の展示物と修復前の写真を見比べました。

展示企画と運営…博物館を例に展示企画と運営の現場の話を講義として受けました。

調査書作成…希望するグループに分かれて作業を取り組みました。内容は金工、彫刻、絵画、漆工、刀剣、書跡です。筆者は書跡で、白衣に着替えて、ビニール製メジャー、鉛筆を使用して「御教書」を調査し、法量を測定しました。

●5日目●
博物館入り替え→調査書作成のグループで指導者とともに宝物の片づけ、ガラスケース、展示室内の掃除、展示物を設置しました。

反省会→学芸員の配慮によるジュースとケーキを食べながら実習生が指導者の前で5日間の実習の感想・反省を一言ずつ発表し、学芸員による実習生へ評価・コメントをもらいました。

※実習費を払っているため、ジュース・ケーキ代は含まれていると考えられます。ケーキはとてもおいしく、食い意地全開の筆者で同級生に笑われました。

実習を通じて筆者が感じたこと

展示物を片づける際に梱包しますが、どのように上手く梱包するかで頭脳と経験がものをいいます。

講義中では、織田信長の書状の掛け軸など重要文化財等の展示物を触る機会があり、緊張して寿命が縮むという思いでした。

展示の入れ替えでは、実際に撤去、掃除、展示を配置するまでの作業を通じて学芸員の業務の大変さを思い知らされました。

展示の入れ替え作業は多数のメンバーの協力のもとチームプレイで作業します。展示物を壊さないように気を付けながら行います。

後日に携わった展示を見に行って、自分が配置した宝物は直されていました。考えながらの作業でしたが、「経験」が大切であると思いました。

学芸員の仕事は信頼関係で成り立っていることを強く実感しました。

学芸員になるには厳しい現実

学芸員になるために筆者は、大学で学芸員資格を取りました。

学芸員資格は大学で取得するのが一番確実で難しくないと思います。

大学の方が受け入れ制度も整っています。

また、大学に通うのは時間的余裕がないという方は、大学の通信教育を利用するのも1つの手段です。

費用は掛かりますが、時間の融通が利くので社会人でも試験に挑戦したいという方にはピッタリです。

ただ、資格取得できれば学芸員にはなれるかというと…現実的にはなれません。

なぜなら、募集定員がわずかで倍率が高いからです。

可能性としては、地方公務員になり文化財関係の仕事につくことです。

ですが、筆者は、学芸員資格を活かして博物館でボランティアをしたり、ライターとしてあなたに発信することで満足しています。

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